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~ ただなんとなく、イナカたる所に住んでいる猫田ジャレの非日常なる日常 ~  

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●きまぐれコラム VOL,26

※ご本人の許可を得て、全文を掲載させていただきました。
(「週末ライブラリー」は、ラジオで読まれたものとほぼ同一のものです)

祝、FM長野ホームページリニューアル!こんにちは、小林夏樹です。
パーソナリティーダイアリーも刷新かい?

今まで番組『BE UP!WEEKEND』の放送に合わせて毎週「きまぐれコラム」をダイアリーに載せてきたので、これからもそうすることにしました。
放送ではそれをそのままBGMにのせて朗読してみたり、それをもとにトークしたり、その日の気分と体調(!?)でお送りしてます。 
文体がカタイよ!と思う方もいらっしゃるかも・・・でもこの方が思ってることがストレートに書けるんだな、僕の場合。 ま、お暇があったら、こちらの方も覗いてみてくださいな!!  
今回は先日出会ったばかりの本の紹介です・・・・。

●週末ライブラリー vol,5                                                                                   
『松商ナイン1991年の快進撃~球児達の15年~』田中玲子著
(郷土出版社)

1991年、春の甲子園1回戦。イチローこと鈴木一朗がピッチャーとしてマウンドに立った愛工大名電を破り2回戦へ駒を進めた時から、その快進撃は始まった。
2回戦、準々決勝、そして準決勝・・・松商は天理・大阪桐蔭・国士舘といった名だたる強豪を撃破しついに決勝まで登り詰めていったのだった。
決勝戦の日、松本の街から人影が消えた。商店がシャッターを下ろし臨時休業を告げる紙が張られた。信州がその日、固唾を呑んでその闘いを見守っていた。    7回5対2松商のリード。マウンドには上田佳範。35イニング連続無失点記録のピッチャーが快投を続けている。このまま行ってくれ!祈りをはらんだ応援の声が最高潮に達していた。だが彼は打たれた。そして降板。同点で迎えた9回裏、ライトに移っていた上田のもとに放たれた打球はそのグラブに触れることなくグランドに落ち、サヨナラ負け。悔しかった。しかし見事な準優勝。夏の甲子園のベスト8の活躍とともに、その年たしかに松商は輝いていた。

著者田中玲子さんは春の選抜の時、その熱狂の渦の中にいたという。そして選手達ひとりひとりのきらめきに魅了されてしまったそうだ。

第1部「91年の快進撃」に描き出された試合のドキュメントは、まるで今そこでプレーされている試合を見ているような臨場感で迫ってくる。戦況を分析しフィールドに立つ選手や名将中原監督の心理に肉薄していく筆者の筆は、時にクールでさえあるように思える。

だが物語の主役は、実はゲーム進行そのものではないことにしばらくすると気づく。主役は人々の心だった。選手同士が、選手と監督が、そしてベンチに入れなかった他の部員達が、いかに強く信頼しあい支え合っていたか、やがて文章はそこにフォーカスが絞り込まれ、こちらも引き込まれていく。

だからこそ田中さんは彼らのその後の15年を取材しようと思ったのではないだろうか。その熱い心に触れてしまったから・・・。あの年、彼らは甲子園で何を得て、同時に何を背負ってしまったのかが、第2部「僕らの大優勝旗~松商ナイン・15年の軌跡~」で語られていく。

ひとりひとりを訪ね歩き話を聞いていく地道な取材により浮かび上がってきたその姿はまるでシーソーゲームの野球の試合そのものだ。

大学野球に進んだものの、熱くなれない自分を見つけ戸惑う姿。いくつかの仕事を渡り歩き、やっと人生をかけられる仕事に出会えたという姿。プロとして今も白球に人生をかける姿。そして彼らの胸にはそれぞれのあの日々がある。

「あの時の厳しさに比べたら耐えられる」

人生の壁に直面したとき、彼らの心はどうやらあの年に、あるいはあの頃に帰るらしい。

かけがえのない思い出はけして古びないし、人をいつまでも輝き続けさせることができる。この本は静かにそう語りかけてくる。  味わい深い1冊だ。